売上がゼロになれば利益もゼロになるのか?

売上がゼロになれば利益もゼロになるのか?と言われれば、確かにそれはそうなるに決まっている。利益率が例え100%でも、利益が存在するには売上がなければならないからだ。

 

しかし売上があれば利益があるかと言えば、それは決してそうではない。それどころか大赤字になる可能性すらも大いにある。売上が100億円あっても赤字の案件を受注し続ければ粗利益がマイナス10億円などという事も十分にあり得るからだ。そこまではいかなくてもトータルで薄利になる事などは普通にある。今の各業界(特に建設業界)はその典型だと思う。

 

売上が10億円で粗利益が1億円、粗利益率は10%。販管費が1,5億円で営業赤字が5千万円、などというのは分かり易いよくある事例だ。10億円、という自社的には長年続いていた一つの目安の売上高を「感覚的な」軸にした結果、10億円の確保が経営の目安になってしまっているという事だ。これらの会社の受注内訳を見ると、実は意外に高利益率の物件が全体の半数近くある。そして残り3割が薄利、2割が超薄利か赤字という構成だ。そのような受注構成の会社を今まで本当に数多く見てきた。

 

「選別受注」という言葉は大昔からある。受注する物件を選べという事だ。そんな言葉やその理屈は、今の世の中の全ての経営者は分かっているはずだ。しかしその選別受注は、本当にごく一部の経営者しか行わない。「そんなに都合のいい訳にはいかない」「薄利の受注もあって高利益の受注がある」「そんな事をすれば仕事がなくなる」と、99%の経営者はそう答える、だから99%の経営者はその壁を突き破る事はできない。

 

気持ちは分かる、そしてその恐れも分かる。しかしいつも言うのだが、その状態と意識で経営した結果がここ10年の各社の業績なのではないかという事だ。それまでの結果が良くなかったという事であれば、そこは変えた方がいいと思うのだが、そこは多くの経営者は嫌がってくる。今のままではいけない、但し変える事はしたくないという事だ。本当にその気持ちは分かるのだが、改善論としてはやはりその筋は通っていない。

 

そういった中で、スタンスを僅かにだが変えようとする経営者も出てくるが、それが本当に僅かの変化であり、一瞬だけの変化の為、結果は変わらない。そしてやはりダメだったと、また元の状態に戻っていく。書籍「チーズはどこに消えた」の同じ場所に留まり続けたねずみのようなものだ。こう書いている内容そのものにも、「そんなに都合のいいようにいかない」という反論が数多く聞こえてきそうだ。

 

売上がゼロになれば利益もゼロになるのか?

そもそも売上がゼロになる事などという事があるはずもない。

 

現実的に言えば、売上が半分程度でもやっていけるような受注体制を取る必要がある。しかしその為には、強烈な選別受注を取る覚悟が必要になる。何より、売上がゼロになってしまうのでは、という恐れを克服しなければならない。しかし心配はいらない、私の17年のコンサルティングの歴史では売上は減っても「最大20%」だ。しかもそのゾーンを超えてしまえば、今度は売上は高利益率を保ったまま上昇に転じてきて、従来の売上をも超えてくる。嘘のような本当の話だ。

 

売上がゼロになったらどうするんだ、と仰る人には到底理解できないだろうが、事実であるものはしょうがない。そう思われる経営者の方には、これからも今のままの経営を続けていただくしかない。