昔からの知人や、よく知る仲の経営者がいる会社などからの受注は、各社少なからずあるとは思う。
旧知で仲もまあまあよければ、仕事を受ける際にも「ある意味」ストレスがなく受注できる事も多い。しかしその部分でうまく取引を行っている会社は少ない。受注面でのストレスこそ少ないものの、その多くは「低利益」という部分に着地する。それなりの仲ではあるが、結果としてうまく使われている人なども多い。
先日もそのような受注をしている会社の社長に、「付き合いの中での受注はやめた方がいいです」と助言した所、まあまあ暗い顔をされ、「なかなか断れないんだよね」と言われた。月次の訪問で、その会社の物件一覧表を見た時に目を引いて利益率が低い物件が数件あり、その物件が付き合いの中での受注だったとの事での話だ。
友人といようより、昔の先輩であるとか、何かの会で一緒になった人だとか、それぞれ微妙な感じの関係で、客観的に見れば「それ位なら断ってもいいのでは?」と思われる程度の会社ばかりだ。
しかし逆にそれ位の感じが一番難しいのかもしれない、詳しく聞くと、金額を丸受けしているとの事。断りにくいというその本心は、「金額交渉をしたくない」「せこいと思われたくない」「お金に固執していると思われたくない」というようなものが隠されているようだ。男のプライドと言ってもいいかもしれない。
それ自体は分からなくもない。微妙な関係の人であればあるほど、「こんな事で交渉してくるんだ」と思われたくないという気持ちは分かる。
しかしよくよく考えれば、それはどう考えても意味のないプライドだ。そこを満たそうとしてそのまま受け入れるのは会社としてはやはり無理がある。そもそも、緻密な金額交渉を避ける心理としては、この事例に近いものはかなり多い。
よって今回はその社長には金額交渉を緻密に行えとは言わなかった。「協力したいんだけど、忙しくてできないんだよね」と言って断る事を勧めた。その言い方ならプライドは満たされる。どうせそういった物件は金額が安く、利益があまり残らないため、交渉できないのなら断った方がマシの物件が多い。
しかし、その時の状況などにより、営業対象案件が少ないなどの場合は、それはやはり交渉するしかない。しかし最近はどの会社もまあまあ物件はあるので、その気になれば断る事などはできるはずだ。
付き合いの中での受注は、後のトラブルの時も含めてやりとりにまあまあ気を遣う。言いたい事も言いにくいし、やりたくない事もやらなければならない事も出てくる。いい事など実はほとんどない。
ドライな交渉がいつでもできる関係、その上で信頼してもらっている会社との関係がベストだろう。そんな会社など多くはないかもしれない。しかし私の顧問先の方々には、いつも詳しく話を聞いた上で、顧客の構成は1年~2年かけて少しずつ整理していってもらっている。2年も経つと見違えるような顧客構成になっている事が多い。今まで何を苦しんでいたのだろう、と皆さん後から言われる。
顧客構成は利益改善の上で重要な一部だ。その中の一つとして、付き合いや知人の会社からの受注はやめる事を強くお勧めする。
何よりその人達はあなたの会社の事を大事に思ってくれてなどはいない。そういった人達に気を遣って、自社の大事な戦力を投じてはいけない。